活版印刷、ふたたび 13

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活版印刷の文字はあたたかい。

一生の仕事をこれと決めた人たちの、活版ひとすじに打ち込む気持ちがある以上、文字に体温があり、本に命が宿るのは、ごく自然なことなんですね。

ブログを書きながらけっこう矛盾したことを主張してきましたが、とにかくそう思います。

わたしはインターネットももちろん使いますが、雑誌も本も大好きです。

図書館に行っても本屋に行っても、大量の本に囲まれると何だか安心します。

古本屋のすえた本の匂いもたまりません。

そんなわけで、インターネットばっかりやってないで本も読みましょう。

活版印刷、ふたたび 12

近年は、インターネットの普及と発展が目覚しいです。

過去に発行されたあらゆる書物をインターネットで閲覧できるようにしようという動きも、すでに進行中です。

本や雑誌が完全に消滅することはなくても、いずれあらゆる印刷媒体が衰退してしまうと予測する人は多いです。

文字はディスプレイで読むもの、という世の中の到来・・・。

しかし、その文字はどうしても薄っぺらい気がします。

ということをブログで書くのもどうかと思いますが。

ディスプレイの文字と活版印刷の文字では、文字としても機能は同じでも、プラスチックのお椀と漆塗りのお椀ほどの違いがあるように思います。

活版で刷った文字は、手の動きや機械の動きと結びついています。

ひとつの文字の後ろに時間があり、労力と研鑽があります。

その集積から生まれた一冊の本は、工芸品のようなものです。

活版印刷、ふたたび 11

現在、手がける印刷物の多くは、短歌や詩の限定版の作品集。

それらの文芸作品では、常用漢字にない漢字もしばしば使われます。

だから工房に並ぶたくさんの活字や母型には、見たこともない感じがたくさんあるそうですし、ひとつ「、」が多いといった、同じに見えてわずかに異なる漢字もあります。

時には出版社による文字の違いもあると言います。

なぜ今も活版印刷を続けるのか。

理由のひとつは、豊潤な日本の文字の文化が、まさに失われようとしているから。

もともと人間の手から生まれ、歴史の中で形を変えた結果、金属の活字を通して紙に定着されるようになった文字。

しかし、その発達の歴史は、デジタル化の中で先行きが知れません。

活版を守るのは、貴重な文字の姿を未来に伝えることに繋がっています。

活版印刷、ふたたび 10

現在74歳の小林さんが内外文字印刷を設立したのは1993年のこと。

ただし前身となった「内外文字精巧」の設立は1956年だったそうです。

親類に母型職人がいたため、子供時代から活版印刷に親しみ、自然と母型職人の道に進んだといいます。

日本語の文字にとことんこだわる熱意や、印刷の質に妥協しない姿勢には、ファンが多いです。

「活版印刷を始めてしばらくは、100円稼ぐのに250円かかった」と言って小林さんは笑います。

天性の明るく前向きな性格と、まわりの人を巻き込むバイタリティが、この印刷会社の力の源となっているんでしょう。

小林さんは、活版印刷のプロとして、いくつかの確固としたポリシーを持っています。

職人に負担をかけるから、雑誌などの定期刊行物の仕事はしないと決めてきました。

欧文中心の印刷物も作らないし、ハガキやカードといった一枚紙の印刷もしません。

活版印刷、ふたたび 9

並んだ活字は、ページの配置に合わせて別の職人が版に組みます。

文字のない空白部分にはインテルという詰め物を使い、ノンブルと言われる頁数表示もここで入れます。

組んだ版は紐で結わえて固定。

そこにインクをのせて紙を当てると、試し刷りのできあがり。

しばしば活版印刷の味わいとされる文字の凹みやかすれは、本来は最低限に抑えなければいけないことだといいます。

そのような文字を修正し、文字の並びや向きをチェックする校正を何度か繰り返します。

製本を前提とした本刷りでは、複数の版を並べて万力で固定して、機械で紙を押し当てていきます。

製本した際にページの表裏で文字がずれないように、版は正確にセットしなければなりません。

わずかに万力の力加減が違うだけで、印刷の位置が変わったり、インクのムラができることも・・。

職人の勘と腕前がものを言いますね。

活版印刷、ふたたび 8

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職人は、ウマから一つひとつ活字を拾って、原稿通りに並べていきます。

常用漢字だけで約二千字ある日本語では、活字を効率よく選りすぐる作業は並大抵のことではないですよね。

特殊な文字は、母型があればすぐに鋳造できますが、新たに母型を発注しなければならないケースもあるそうです。

繰り返し使って傷んだ活字は、溶かして再利用。

また内外文字印刷では、活字を拾う作業と並行して、1980年代からテープ鑽孔機も使っています。

原稿を見ながらこの機械に文字を入力していくと、無数の穴のあいたテープが出てきます。

そのテープを自動鋳造機に読み込ませると、原稿通りに次々に活字が鋳造される仕組み。

限られた書体しか使えず、珍しい漢字の多い文章には向かないものの、一般的な書籍ならとても効率がいいそうです。

ずっと産業として成り立ってきたのだから当然ですが、活版印刷は決して合理性に背を向けたものではないんですよね。

活版印刷、ふたたび 7

苫米地さんは22歳で母型作りを始めて、現在70歳。

自分が止めたら、そこで一つの文化が途絶えてしまう。

そんな気持ちで、この仕事を今も続けているといいます。

同じく板橋区にある「内外文字印刷」は、東京都内でも数少ない本格的な活版専門の印刷所。

創業者の小林敬さんと奥さん、息子、そして3人の職人が働いています。

活版印刷所では、母型から大量の合金製の活字を鋳造し、ウマと呼ばれる棚にストックしておきます。

書体や文字の大きさを豊富に揃えるには広いスペースが必要。

活版に使われる特殊な合金は活字合金とも呼ばれ、すず、鉛、アンチモンからなります。

この組成もグーテンベルクの発明でした。

活版印刷、ふたたび 6

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母型職人、苫米地志郎さんの工房では今も、往年の技術をそのままに母型を作っています。

母型作りは、まずビニールや亜鉛の原板に文字を写すことから始まります。

その原板を機械にセットし、ホロアと呼ばれる針で文字の溝をなぞると、特殊なカッターが、その動き通りに機械上部に取り付けた真鍮を削っていきます。

倍率を変えると、同じ原板で多様なサイズの母型を製作できるそうです。

ただし印刷する時にインクが均一になるように、一文字の中の線の数によって、線の太さや彫りの深さを調節しなければなりません。

一朝一夕には習得できない技術ですね。

活版印刷、ふたたび 5

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最近は、昔ながらの活版印刷の味わいに惹かれ、この技術を継承しようとする動きが若い世代に見られます。

そこから新しい表現が生まれつつあるのは頼もしいことですよね。

しかし、その規模は限られています。

かつて一大産業だった活版印刷が、時代の中で風前の灯となっている状況に変わりはないんです。

活版印刷の根本は、金属の活字。

合金を流し込んで、その活字を鋳造する真鍮製の型を母型と呼びます。

母型の品質が活字の品質を決め、それが印刷に表れます。

東京都板橋区の「協栄精工」は、都内唯一の現役の母型職人、苫米地志郎さんの工房。

今も往年の技術をそのままに母型を作っています。

活版印刷、ふたたび 4

オフセット印刷の版は薄く平らで、活版に比べて扱いやすく、より大量生産に向いていました。

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日本では、1980年頃から大手の新聞社がこの手法を取り入れたのと同時に、活版印刷はあっという問に過去の技術となってしまいました。

さらに近年は、コンピュータを使って版を作る技術が普及。

案内状や名刺など簡単な印刷物を作る企業を除くと、活版専門の印刷所は全国でもわずかしか残っていません。

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